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日本人炎症性腸疾患患者における COVID(コビット)-19感染者の多施設共同レジストリ研究

日本人炎症性腸疾患患者における
COVID(コビット)-19感染者の多施設共同レジストリ研究

2020年1月1日~2021年12月31日の間に 東邦大学医療センター佐倉病院に炎症性腸疾患で通院中の方でCOVID(コビット)-19に感染された方へ

研究機関名 東邦大学医療センター佐倉病院
研究機関長 病院長名 吉田 友英
研究責任者 東邦大学医療センター佐倉病院 消化器内科 教授 松岡 克善

1.研究の概要

1) 研究の背景

 潰瘍性大腸炎は腸管に慢性の炎症が起こる病気です。原因が不明のため根治療法がありませんので、免疫を抑える薬剤が用いられています。近年、潰瘍性大腸炎に対して様々な治療法が開発されていますが、それらの治療法の短期および長期的な治療効果を、実際の診療の場で検証した研究は少ないです。今回の研究では、ヤヌスキナーゼ阻害薬 (トファシチニブ)および抗α4β7インテグリン抗体製剤 (ベドリズマブ)、抗IL-12/23p40抗体製剤(ウステキヌマブ)を使用して当院または共同研究施設で治療を受けたことのある炎症性腸疾患の患者さんの治療効果を診療録 (カルテ)から調査し、各治療法の短期および長期的な効果を調べます。  現在、国際的に急速に蔓延している重度の急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2(サーズ・コブ・ツー))、そして、その結果として生じるコロナウイルス病(COVID(コビット)-19)が、臨床現場における患者さんや医療従事者の混乱を招いています。高齢者やがん患者さんでは、COVID-19感染が悪くなりやすい、つまり、免疫機能低下は、感染悪化の1つのリスクになることが予測されています。しかしながら日本においては、COVID-19感染が、免疫の異常による病気(関節リウマチなど)やがん患者さんにどのような影響を与えるかは分かっておりません。さらに、呼吸器症状が注目されていますが、COVID-19患者さんの約20%で、嘔吐、下痢、腹痛などの胃腸症状を認める事が臨床的に明らかとなってきています。
 炎症性腸疾患は若年の方に発症し、慢性的な腸管炎症を主体とする疾患です。炎症性腸疾患の病態はまだ完全には解明されてはいませんが、遺伝子学的背景、環境因子、免疫反応といった多種多様な要因が複雑にからみあって、発症につながっていると考えられています。1950年以降、日本においては炎症性腸疾患の患者さんの数が増加傾向となり、それと共に、これまでの治療が効かない患者さんも増加しつつあります。そのため、ステロイドを始めとした免疫機能を低下させる作用のある薬剤治療を必要とする患者さんも増加しています。従って、腸の炎症が病気の中心であり、さらに免疫機能を低下させる作用のある薬剤治療が中心の炎症性腸疾患患者さんでは、COVID-19の感染がその臨床経過に影響を及ぼす可能性が示唆されますが、どのような影響を及ぼすかは未だに明らかではありません。

2) 研究の目的・意義・医学上の貢献

 COVID-19に感染した日本人炎症性腸疾患患者さんの情報を集めて、炎症性腸疾患患者さんにおけるCOVID-19感染率ならびにCOVID-19感染が患者さんの症状に及ぼす影響を明らかにします。このことは、COVID-19の発症予防やCOVID-19感染時の炎症性腸疾患の治療内容の適切化につながります。

3) 研究組織

 本研究は札幌医科大学附属病院(研究責任者:仲瀬裕志 [消化器内科・教授])を主たる研究機関として、全国約30施設が参加して行います。

2.研究の方法

1) 研究対象者さん

 東邦大学医療センター佐倉病院消化器内科に通院もしくは入院中の炎症性腸疾患患者さん(潰瘍性大腸炎、クローン病、分類不能型腸炎、腸管ベーチェット病、単純性潰瘍)の中で、2020年1月1日から2021年12月31日までにCOVID-19への感染を認めた患者さんを研究対象者とします。なお、症状を伴わないもののCOVID-19への感染を認めた「無症状病原体保有者」も対象とします。   5-1 選択基準 ・COVID-19に対する通院や入院が終了した患者さん
5-2 除外基準
・年齢基準は設けない
・本研究の参加を希望されない患者さん
・研究責任者が研究対象者として不適当と判断した患者さん

2) 研究期間

研究期間
倫理委員会承認日|2022年3月31日
研究対象期間
2020年1月~2021年12月31日

3) 予定症例数

2021年12月31日の時点で
当院 20症例 (参加施設63施設、研究全体 500症例)
を予定しています。

4) 研究方法

各施設の診療録から施設の研究責任者または研究分担者が調査項目の調査を行います。各施設における研究責任者または研究分担者は、得られた情報をエクセルファイルの「症例報告書」に入力し、札幌医科大学附属消化器内科学講座の担当者にパスワードでロックされ匿名化された「症例報告書」を電子メールで提供します。もしくは、得られた情報を入力用の専用webサーバー上で入力します。

5) 使用する情報

 この研究に使用するのは、大学病院のカルテに記載されている情報の中から以下の項目を抽出し使用させていただきます。分析する際には氏名、生年月日などのあなたを特定できる情報は削除して使用します。また、あなたの情報などが漏洩しないようプライバシーの保護には細心の注意を払います。
・病歴: 年齢、性別、身長、体重、診断名、喫煙の有無、併存症(心疾患、糖尿病、喘息、慢性呼吸器疾患、高血圧、悪性腫瘍、脳血管障害、慢性腎疾患、慢性肝障害、その他)など 。
・炎症性腸疾患に関する事項:活動性(潰瘍性大腸炎はpMayo scoreで、クローン病はHBI(Harvey-Brandshaw index)で評価する。その他の疾患は、寛解、軽症、中等症、重症、不明から選択)、罹病期間、病型、治療内容、COVID-19感染中 のIBD治療継続の有無、COVID-19感染によるIBDの増悪の有無など。
・COVID-19に関する事項:診断日、発症から診断までの日数、診断に至った検査法(PCR検査(鼻咽頭)、PCR検査(唾液)、抗体検査、抗原検査、その他、不明、から選択)、感染経路、症状とその期間、肺炎の有無、治療内容(レムデシビル、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、オセルタミビル、ロピナプレビル・リトナビル、トシリズマブ、ステロイド、ファビピラビル、シクレソニド、ナファモスタット、カモスタット、抗TNF-α抗体製剤、血球成分除去療法、その他、不明、からの選択)、重症度/転帰(外来治療、入院治療、集中治療、死亡)、診断日から検査で陰性を確認するまでの日数。
・画像診断: 内視鏡的所見、レントゲン・CT検査所見など。
・臨床検査(血液):白血球、赤血球、血小板、総蛋白、肝機能、膵酵素、腎機能、炎症反応など。

6) 外部への情報の提供

この研究に使用する情報は、各協力施設から当院に提供していただきますが、当院から外部へ情報提供することはありません。なお、提供していただく際には、氏名、生年月日などの患者さんを特定できる情報は削除していただきます。

7) 情報の保存、二次利用

7-1 データの匿名化と管理方法
各施設の調査により得られたデータを取扱う際は、対象患者さんの個人情報保護に十分配慮します。特定の個人を識別することができないよう、対象患者さんに研究用の符号もしくは番号を付与し対応表を作成します。対応表は各施設においてアクセス制限のあるパソコン(又は紙媒体等は鍵のかかるキャビネット)で厳重に管理します。
東邦大学医療センター佐倉病院においては、統合したデータはアクセス制限のあるパソコン(又は紙媒体等は鍵のかかるキャビネット)で厳重に管理します。
7-2 参加中止患者さんのデータの取り扱いについて
参加中止患者さんのデータについては、中止の要望を受けた時点で解析から除いて対応します。
7-3 データの二次利用について
本研究で得られたデータを、新たな研究目的で二次利用する可能性があります。本研究で得られたデータのみを用いる場合は、当該研究の研究責任者が所属する臨床研究審査委員会(倫理委員会)の承認を必要とします。  7-4 データの保管および廃棄の方法
匿名加工情報として提供された情報について、研究実施施設である札幌医科大学医学部消化器内科学講座においては、同講座の研究室において厳重に保管します。保管場所のセキュリティーは施設の入り口および研究室の入り口のロックにより保たれます。電子データについては外部から切り離されたコンピューターのハードディスク内に保存し、コンピューターはパスワード管理を行い、情報の紛失・漏えい等に十分配慮した取扱いの上で保管します。また、情報の提供を行った共同研究施設の名称、住所および責任者の氏名などについて記録を作成し、保管します。なお、保管期間は本研究の終了日より5年を経過した日までとします。

8) 対象患者さんに生じる負担ならびに予想されるリスクと利益

8-1 予想される利益(効果)
本研究へ参加することにより対象患者さんに直接の利益は生じませんが、研究成果により将来の医療の進歩に貢献できる可能性があります。
8-2 予想される負担と不利益
本研究は対象患者さんから得られた情報を用いた研究であり、対象患者さんに負担や不利益は生じません。

9) 資金源・利益相反に関する状況

本研究は厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」の公的研究費で賄われます。本研究の計画・実施・報告において、研究の結果および結果の解釈に影響を及ぼすような「起こりえる利益相反」は存在せず、研究の実施が研究対象患者さんの権利・利益を損ねることはありません。

10) 情報の管理責任者

この研究で使用する情報は、以下の責任者が管理します。
東邦大学医療センター佐倉病院消化器内科 松岡 克善

11)研究結果の公表

この研究は氏名、生年月日などのあなたを特定できるデータをわからない形にして、学会や論文で発表しますので、ご了解ください。
また、日本におけるCOVID-19患者さんの急激な増加から、多くの実地医家の先生方や患者さんのために、定期的に本研究のデータを厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」や日本炎症性腸疾患学会のWEBに掲載することが日本の先生方から強く要望されています。そのため、2021年2月より、集積されたデータを定期的に上記WEBに掲載します。

12) 研究に関する問い合せ等

この研究にご質問等がありましたら下記の連絡先までお問い合わせ下さい。また、あなたの情報が研究に使用されることについて、あなたもしくは代理人の方にご了承いただけない場合には研究に使用しませんので、2022年2月28日までの間に下記の連絡先までお申し出ください。お申し出をいただいた時点で、研究に用いないように手続をして、研究に用いられることはありません。この場合も、その後の診療など病院サービスにおいて患者の皆様に不利益が生じることはありません。
ご連絡頂いた時点が上記お問い合せ期間を過ぎていて、あなたを特定できる情報がすでに削除されて研究が実施されている場合や、個人が特定できない形ですでに研究結果が学術論文などに公表されている場合は、解析結果からあなたに関する情報を取り除くことができないので、その点はご了承下さい。

<問い合わせ・連絡先>

東邦大学医療センター佐倉病院
消化器内科 職位・氏名 教授・松岡克善
電話 043-462-8811