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ノロウイルスについて

(特別な病気のない、一般の健康成人の方を対象に記載してあります。)
2014年12月26日
東邦大学医療センター佐倉病院
病 院 長
感染対策室
嘔吐や下痢を主症状とする急性胃腸炎が流行しています。原因の多くは、ウイルス感染で、この時期は、特にノロウイルスによるものが多いようです。ノロウイルス以外のウイルスによる場合もありますが、基本はほとんど同じです。
    1. 嘔吐が数時間続いた後に、下痢がはじまりますが、ほとんどの場合、1-2日で快方に向かいます。嘔吐と下痢の程度は個人差もありますが、小児は嘔吐が強く、成人は下痢が強い傾向があるようです。
    2. 腹痛は、それほど強くはない場合が多く、発熱は通常、38度程度までです。
    3. 家族や周囲に、同じ症状の方が、数日以内に発生している場合は、疑いが濃くなります。

  • 便を用いたノロウイルスの迅速診断は可能ですが、原則として検査は行いません。医学的に、検査をする意味は、ほとんどないからです。迅速診断による検査は絶対的なものではないですし、ノロウイルスとわかっても、特に治療がかわる事はありません。ノロウイルスでもそれ以外のウイルス(ロタウイルスなど)でも、手洗いなどの感染予防の注意点も同様です。「ノロウイルスだから危険である」とか、「ノロウイルスでないから大丈夫」という事はありません。職場等から検査が指示される場合もあるようですが、医学的に意味のないものですので、当院では、行っておりません。

  • 健康成人の方で、Q1で説明したような、典型的な例では、必要性は低いです。腹痛が強い場合などは、他の疾患も考えて検査を行います。高齢の方、脱水症状の強い方、熱の特に高い方、他の重い疾患をお持ちの方などの場合には、全身状態を把握するためにも行うことがあります。

  • ノロウイルス以外にもロタウイルスなどが冬季に胃腸炎を起こすウイルスとして知られています。他に、細菌性の胃腸炎や食中毒があります。ブドウ球菌、病原性大腸菌、赤痢、サルモネラなどです。むしろ、これらの病原体の場合の方がノロウイルスよりも、重症になりがちです。強い腹痛が続く、熱が高い、症状が長引く、便に血が混じる、などの場合は、抗生剤を処方したり、便の細菌検査(ノロウイルスの検査とは違います)を行ったり、時に入院を要する事もあります。細菌性胃腸炎は冬季よりも夏季に多くみられますが(東南アジアなどの)海外旅行帰りの場合は、冬季でも当然ありえます。

  • 病原体が付着した食品を常温で放置し、菌が増殖した状態で摂取すると、激しい腹痛や下痢などの症状がでます。それが食中毒です。たとえば、ブドウ球菌は、人の手指からよく検出されますが、それを舐めたくらいでは何もおきません。しかしその手で調理した食品を長時間放置して菌が増殖してから摂取すれば、激しい食中毒を引きおこします。ノロウイルスの場合は、感染力が強く、手指にわずかに付着した程度の量でも胃腸炎症状を引き起こします。他方、2枚貝などの食品に付着している事も多く、食中毒として発症する場合もあります。一般に食中毒では、増殖した多数の菌や毒素で引き起こされるので、通常の胃腸炎より重くなりますが、明確な区別は困難です。

  • 点滴は、ウイルスに効くわけではなく、脱水症状の改善のためです。1時間の点滴の栄養価と水分は、砂糖入りの紅茶1-2杯程度です。口から飲めれば、それで構いませんし、嘔吐が続いても、多くの場合は、数時間程度で自然におさまってきます。しかし、高齢者の方や、嘔吐が長時間続く場合など、「コップ1杯の水分補給」が重要な場合もあり、医師の判断で行う場合もあります。ノロウイルスに効く薬はありません。細菌感染が疑われる場合は、抗生剤が処方される事もありますが、ウイルスには効きません。

  • 一般の健康成人の方で、典型的なノロウイルス感染症の症状(Q1)である場合は、その通りです。当院は悪性腫瘍の治療中など、免疫力の弱い患者さんが多く、そうした患者さんを守る意味でも、一般の健康成人の方の直接の受診は、どうか、控えていただきたいと考えます。

  • 一般の方の直接死因になる事は、まず考えられません。しかし、体の自由の効かない方や、抵抗力の特に弱い方などでは、吐物を喉につまらせたり、誤嚥して肺炎になるなどの場合があります。こうした方に、病気をうつさないようにする事が最も重要なのです。入院患者さんの見舞い時などには、特に注意してください。

    1. 嘔吐が続いているときには、大変つらいと思いますが、嘔吐は、数時間程度でおさまってくる場合が多いです。
    2. 嘔吐がおさまって、下痢が主体になってくれば、水分を十分にとるようにしてください。スポーツドリンク、りんごジュース、水、お茶、少しずつ、頻回に飲んでください。OS-1という飲み物が薬局で売られていますので、それでもかまいません。尿の量、回数を目安にされるといいと思います。空腹感がでてくれば、消化の良い食事を少量から開始してください。下痢止めは、あまり使わない方が良いとされています。
    3. 吐いたものや、下痢便には、無数のウイルスが含まれます。治ったあとも、便には1週間以上、ウイルスが排出され続けると言われています。家族全員で、食事前、トイレ後の手洗いなど、徹底してください。病院内のトイレを使われる際も、お互いのために、手洗いなど、十分に注意してください。吐物や便が、寝具や床などについた場合は、希釈した漂白剤を用いた消毒が望ましいとされています。

  • 急性虫垂炎や腸閉塞など、初期症状が似ていて、初期には、診断できないこともあります。途中から、他の疾患を合併することもあります。症状が悪化していく場合、なかなか改善しない場合は、かかりつけの診療所、当番医、夜間急病診療所にご相談願います。救急外来受診は、症状の特に重い場合に限ります。